「あなたと同じものを食べて同じ気持ちになりたい」料理家・小磯ふきこさんインタビュー【前編】
手もみ料理をはじめ多くのレシピが雑誌やTVなどのメディアで紹介され、長年ご活躍されている料理家・小磯ふきこさん。実は、過去にオルディとコラボして商品を作ったり、レシピの制作などをしてくださった方でもあります。
そんなオルディと長年ご縁のある小磯さんにじっくりインタビューをしてきました(^^)「あなたと同じものを食べて同じ気持ちになりたい」そう語る小磯さんのお話が素敵でした。
前編では小磯さんのこれまでのストーリーについて、後編では実際に手もみジュースを作りながらポリ袋調理や手もみレシピの良さについて、2部に分けてお届けします。
お料理を始めたきっかけと素敵なご縁
——最初は絵本作家を目指されていたのですか?
はい。学生時代は絵本作家になりたくて、美大を目指していました。絵本を囲みながら気持ちがひとつになってゆく時間が、とてもあたたかく感じていました。私もそんな空間や時間をつくれる人になりたいと思ったんです。
——留学先のニュージーランドでアフタヌーンティー文化に出会って食に興味をもたれたのですよね。
そうなんです。絵本作家になることを一時は諦めていましたが、当時働いていたデザイン会社の社長に背中を押していただいて、ニュージーランドに留学して学ぶことに決めました。ニュージーランドはイギリスの文化ということで、授業の合間にティータイムがあったんです。カフェテリアにある美味しそうな焼き菓子と一緒に紅茶を飲みながら、クラスメイトや先生とテーブルを囲んで話すという習慣があり、その時間がとても心地良い時間でした。当時日本ではまだメジャーではなかった、マフィンやスコーンのような素朴だけど美味しい焼き菓子に魅了されて「帰国したらマフィン屋さんをやりたい!」と皆に話すほど夢中でした。
——そこからパン職人、カフェ、イタリアンやフレンチのキッチンで働かれてきたのですね。
そうです。今のようにSNSがなかったので、絵本作家になるにはコンテストに応募するしかないと思っていました。働きながらコンテストに応募しようと、地元の逗子で有名だったパン屋にパン職人として雇っていただきました。酵母やパン作りについて丁寧に教えてくださった職人の先輩の影響もあって、いつのまにか絵本を描くことよりもパン作りに夢中になっていましたね。
料理未経験だった私には、レストランでたくさんの食材や調味料を使い分けるシェフの姿がまるで魔法使いのように見えました。テーブルに運ばれた1枚のお皿を見て、涙を流したり、思い出を話したりするお客様もいらして、1枚のお皿には物語があることに気付かされたんです。それがきっかけで食の世界に引き込まれていきました。
——料理に興味がなかったのにそこまで料理一筋でやってこられたのはどうしてですか?
料理を出した時のお客様の驚く顔や喜ぶ顔が好きだからです。料理を通じて、作り手と召し上がる方のそれぞれの想いがひとつとなって…。絵本のようでしょ?そんな空間や時間に幸せを感じます。
——独立された頃は、何をしようと思っていたのですか?
個人で食の仕事をするようになった頃、食事をする時間が十分に取りにくいオフィス街で働く方々に、出来立ての手作りお弁当やスープをお届けしたい!と、キッチンカーでの販売を企画していました。キッチンカーでの販売は今のようにメジャーではなかったので、車改造費や場所代など資金面でのハードルが高く、足りない開業資金をアルバイト代で用意しようと考えていました。
そんな時にアルバイト情報誌にスープ屋さんの求人が掲載されていたので、ここだ!と思って早速応募したんです。面接当日に現れたのが、私が以前働いていたイタリアンレストランのお客様で、オープンキッチン越しに素敵な夢を話して聞かせて下さった遠山正道さん(株式会社スマイルズ代表取締役社長)だったんです。
——わー!ドラマですね。
その場ですぐに合格をいただきました(笑)その出会いは本当に嬉しかったです。遠山さんの考え方はとてもユニークで、作り手の一方通行的な構成ではなく、いろいろな角度からものごとを見たり発想することを学びました。
野菜ソムリエの資格を取った理由
——野菜ソムリエの資格を取得されたきっかけって何かあったのですか?
「本物の至福な一皿」を作るために素材の大切さについて勉強をしたいと思ったからです。当時30歳前後で、仕事も軌道に乗って人に頼られる事も増えて充実した日々でした。ただ、今思うと忙しすぎましたね。その結果ある日突然体調を崩し、好きだった仕事ができなくなりました。
その時に「食の基本」を学び直す必要があると感じたのです。「体は食べたものからできている」こと。体をつくる「食材」を知ること。「素材本来の美味しさ」や「安全性」を知ること。健康な時には気付かなかった本当に大切なことを学びたくなり、まずは野菜ソムリエの資格を取ろうと思いました。
ポリ袋調理を始めたきっかけとオルディとの出会い
——ポリ袋調理を始めたきっかけは何ですか?
日本野菜ソムリエ協会が「野菜・果物をもっと食べよう!」をコンセプトに、産地直送された材料を使用したジューススタンドを新設される際に、その店舗立上げに関わらせていただいた時のことです。
オープンした後に「こどもの日に何かイベントができませんか?」と出店先のデパート様よりご依頼があって、どうしたら子供たちに楽しんでもらえるかと皆で考えていると、取引業者様が「ポリ袋に果物を入れてもんだらどう?」と提案してくださりました。とても面白い!と思ったんです。それをきっかけにポリ袋を使って「手もみジュース」レシピを作り始めるようになりました。
その後、ジューススタンドでのレシピ開発経験や当時の健康ブームも相まってスムージーの本を出版させていただくこととなり、その本の後ろの数ページにジューサーを使わなくてもポリ袋1枚で簡単・美味しい・時短・洗いものが出ずに作れる手もみジュースのレシピを数点掲載していただきました。それが多くのメディアの方に注目していただき、そこからポリ袋1枚で作る「手もみレシピ」が生まれ、ポリ袋調理の世界が広がっていきました。
——弊社の代表の寳田が、TVに出られている小磯さんを見てご自宅に伺ったのが始まりですよね。
はい。お昼のTV番組で手もみジュースと手もみで作るパスタを紹介させていただいたのを御社の寶田社長様が偶然観てくださって、後日お会いしたのがオルディ株式会社様との出会いです。
そこから御社と一緒に、手もみレシピに関連するポリ袋の開発やノベルティー作り、コラボ企画商品「レシピ付き・手もみ専用ポリぶくろ」の製作と販売、レシピの制作や監修、販売記念イベントなど、たくさんの経験をさせていただきました。
「大切な人と囲む食卓は何よりもごちそう」
——小磯さんの本を見て実際に料理をされた方からの印象深かったエピソードがあったとか。
3.11で被災して避難生活をされていた方から突然メールが送られてきたんです。「洗い物が出来ないし調理器具も少ない中だったけれど、図書館で小磯さんの本を借りて手もみジュースを作ったら子どもたちが喜んでくれました。ありがとうございました。」と書いてくださっていました。何とも言えないあたたかい気持ちになり、これからもがんばろう!と思いました。ポリ袋が非常時にも使える料理法だと実感したエピソードです。
——小磯さんが料理を通して伝えたいことって何ですか?
料理を通して人とのぬくもりを伝えたいですね。コロナ禍以降「人」との関わり方が変わると同時に「食」のあり方も変わりました。ボタン1つでお店の味が届いたり、コンビニにも常にたくさんの食べ物があったりと、いつでも簡単に美味しい食べ物が購入できるようになったからこそ「手作りの大切さ・美味しさ・楽しさ」をお伝えしたいです。味が良い料理だけが記憶に残るわけではないように、人のぬくもりが美味しさには大事だと考えています。
また、食から生まれる隔たりをなくしたいです。フレンチで働いていた時に互いの夢を語り合った藤春幸治シェフの「ケアリングフード」を学びたいです。アレルギーや病気で食事制限が必要だったり、宗教上の理由や理念の違いなどで同じメニューが食べられないと互いが気を遣い合うのではなく、誰にも気兼ねなく、ひとつの食卓で目の前にいるあなたと同じものを食べて、同じ気持ちになりたいと思います。自身のコンセプトである「大切な人と囲む食卓は何よりもごちそう」。自分の追い求める理想にケアリングフードの概念は必要だと感じています。
お話を聞かせていただき、ありがとうございました。さて次回の後編では手もみジュースを実際に作って飲んでみました。作るのが簡単でおいしかったです(^^)後編もお楽しみに!
【小磯さんのInstagram・サイトはこちらから↓】